「カブリダニ」@大曽根賢

2023年-2026年

全6巻

★★★

 

●あらすじ(GEMINIより)

正義感あふれる新米警察官の佐藤は、暴走車から子供たちを庇った事故をきっかけに、13年前の高校時代へとタイムリープしてしまう。目覚めた過去の世界で待ち受けていたのは、当時は原因不明の自死と処理されていた親友の死。そして、彼の命を奪った卑劣ないじめの現実だった。

時を越えて現代から持ち越されたのは、一丁の実銃。失われた親友の命を救い、隠蔽された真相を暴くため、佐藤は時を遡った警察官として、法では裁けぬ悪へと立ち向かう決意を固める。

タイトル「カブリダニ」が示すのは、害虫を狩る天敵(益虫)の姿。親友を追い詰めた加害者たちを追いつめる中で、佐藤自身もまた復讐の業と正義の境界線に苛まれていく。

過去をやり直し、悲劇の連鎖を断ち切ることはできるのか。一丁の拳銃を手に紡がれる、切なくも重厚なタイムリープ・クライムサスペンス。

●感想

タイムリープ×サスペンスという要素自体は、現代の漫画や小説において決して珍しいモチーフではない。新米警察官の主人公が13年前の高校時代に遡り、自死した親友を救うために過去をやり直そうとする骨組みは、引きとしては非常に分かりやすい。

しかし、読み進めるにつれて設定や展開の力技感がどうしても気になってしまった。特に現代から過去へのタイムリープに伴い一丁の実銃を持ち込めてしまう前提や、警察官としての倫理観を持ちながらもあっさりと私的な復讐や制裁へ傾倒していく主人公の心理描写など、リアリティのラインに首をかしげる場面が少なくない。

タイムリープものの醍醐味は、限られた条件の中でいかに過去を変えるかという緻密なロジックや伏線回収にある。本作はそのロジックの詰めの甘さや不自然さが目立ち、勢いやインパクト重視のサスペンス描写に頼り切っている印象を拭えなかった。

害虫を狩る「カブリダニ」というタイトルの比喩や、復讐に囚われる人間の業を描こうとするテーマ性自体には光るものがある。だが、作品の土台となるロジックや設定の強引さに一度違和感を覚えてしまうと、最後まで物語へ没入するのは難しかったというのが正直な感想だ。ロジックの整合性を重視する読者には、やや物足りなさが残る作品かもしれない。

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