2003年-2010年
全15巻
★★★

●あらすじ(GEMINIより)
寛永6年、駿河城主・徳川忠長の命により、本来なら木刀で行われるはずの御前試合が、惨劇を呼ぶ「真剣試合」として執り行われることとなった。
第一試合の場に現れたのは、尋常ならざる異形のふたり。一人は左腕を失った独腕の剣士・藤木源之助。もう一人は盲目にして足を引きずる隻眼跛足の剣士・伊良子清玄。凄絶な執念を身に纏う二人は、かつて濃尾無双と称された秘剣の達人・岩本虎眼が率いる「虎眼流」道場の同門であり、かつては流派の跡目と虎眼の娘・三重の祝言を巡り鎬を削ったライバル同士であった。
野心を秘めて虎眼流に入門した伊良子は、類稀なる才能で頭角を現し、虎眼の信頼を得る。しかし、虎眼の情婦であるおいくと密通したことが発覚。激怒した虎眼の手によって両目を打ち据えられ、凄惨なリンチの末に道場を追放されてしまう。
復讐を誓う伊良子は、盲目となりながらも持ち前の執念で独自の必殺剣「無明逆流れ」を編み出す。やが者となった伊良子は刺客として虎眼流の刺客を次々と返り討ちにし、ついには狂気の師・虎眼をも討ち取って道場を壊滅へと追い込んだ。
残された藤木源之助は、失われた流派の尊厳と亡き師の無念を背負い、さらには自身も左腕を失いながらも、虎眼流の奥義を極めんと己を鍛え上げる。伊良子への憎悪と、武士としての矜持、そして虎眼の娘・三重の複雑な想いが交錯する中、二人はそれぞれの執念を剣に宿し、運命の刺し違えへと突き進んでいく。
人間の業と執着、武士道という名の狂気が渦巻く中、片腕の藤木と盲目の伊良子。二人の鬼子が辿り着いた果てに待つのは、救いなき極限の決闘であった。山口貴由の圧倒的な画力で描かれる、美しくも凄惨な残酷時代劇の傑作。
●感想
世間での評価が非常に高く、確かに引き込まれる面白さはあるのだが、個人的には「そこそこ楽しめた」というラインに落ち着いた。
画面から溢れ出る圧倒的な画力や、登場人物たちが抱える常軌を逸した狂気の熱量は間違いなく凄い。一刀のもとに肉体が裂ける凄絶な緊張感には目を見張るものがある。ただ、その強烈すぎる残酷描写や、救いのないドロドロとした愛憎劇が延々と続くため、読んでいてとにかく胃がもたれる。
武士道という名の狂気を極限まで描いた世界観は唯一無二だし、歴史劇としての見ごたえも十分。だが、ページをめくるたびに精神と体力をゴリゴリと削られるため、人を選ぶ作品であることは間違いない。
作品としての凄みや中毒性は認めつつも、読了後に残る重い疲労感を考えると、気軽に万人に勧められるタイプではない。「重厚で癖の強い時代劇を一度読んでみたい」という人なら、試してみる価値はある一冊だ。