★★★
2020年-2021年
全3巻

●あらすじ(GEMINIより)
大手電器メーカー「初芝電器産業」の社長として、数々のビジネスの修羅場を潜り抜けてきた島耕作(54歳)。ある日、ファミレスで商談に臨んでいた彼は、突如店内に飛び込んできたトラックの衝突事故に巻き込まれてしまう。意識を失い、再び目を覚ました場所は――見知らぬ異世界の王宮だった。
彼が転生したのは、剣と魔法が存在する「ファルムス王国」。しかも、王国の治安を担う近衛騎士団の団長「シマ・コーサク」という重要人物の身体に宿っていたのだ。魔物や魔法が存在する未知の世界に戸惑いつつも、島耕作は長年日本のビジネス社会で叩き叩き上げられてきた「優秀なサラリーマン」としての経験と危機管理能力を武器に、騎士団長としての公務に向き合うことを決意する。
騎士団に課される課題は、単なる魔物の討伐だけに留まらなかった。部下たちのモチベーション管理や派閥争い、予算配分や領地経営、さらには隣国との政治的な駆け引きなど、現代の企業経営と驚くほど共通する泥臭い問題が山積みだったのだ。シマ・コーサクは持ち前のスマートな交渉力、傾聴の姿勢、そして迅速な意思決定で、異世界の人々が直面する難題をビジネスの手法を用いて鮮やかに解決していく。
もちろん、島耕作シリーズの代名詞とも言える「なぜか周囲の魅力的な女性たちからモテてしまう」というお約束の展開も異世界で健在。騎士団の部下や異世界の美女たちとの人間模様を織り交ぜながら、彼は騎士団の組織改革と王国の平和のために邁進していく。
サラリーマン漫画の最高峰と「異世界転生」が見事に融合した本作。ビジネスの知恵と圧倒的な人間力で異世界のサクセスストーリーを駆け上がる、異色にして爽快な異世界ビジネスファンタジーである。
●感想
長年『島耕作』シリーズを追いかけている一ファンとして、気になっていたスピンオフ『騎士団長 島耕作』(全3巻)を読み切りました。
率直な感想を言ってしまうと……「いくら何でも設定が奇想天外すぎて、素直には楽しめなかった」というのが本音です。
これまでビジネス社会のリアルな駆け引きや修羅場を描いてきた作品だからこそ、「島耕作がトラックに跳ねられて異世界転生し、騎士団長になる」という展開にはどうしても乗っかりきれず、終始シュールな感覚が勝ってしまいました。
「ビジネスの手法で異世界の課題を解決する」というコンセプト自体は面白い試みなのですが、従来の島耕作らしい生々しさや重厚感を期待して読むと、ギャップが大きすぎるかもしれません。
ただ、全3巻というコンパクトな巻数にまとまっていたことは本当に良かったです。
もしこれが10巻も20巻も続く長編だったら途中で挫折していたかもしれませんが、「3巻でサクッと完結する」と分かっていたからこそ、なんとか最後まで読み切ることができました。1巻完結の出落ちで終わらせず、3巻できれいにストーリーを畳み切った構成力は流石です。
異世界モノやライトなパロディとして割り切って読める方には刺さるのかもしれませんが、純粋な「島耕作のリアルなサクセスストーリー」が好きな自分にとっては、少々変化球が過ぎる一作でした。
やっぱり自分は、スーツを着て現実のビジネス界で戦う島耕作の方がしっくりくるな、と再確認できた意味では貴重な読書体験でした(笑)。