★★★★★
全35巻
2003年-2011年

●あらすじ(GEMINIより)
舞台は、地に満ちる霊的な力を集めて増幅させ、群がる妖(あやかし)たちに異常な進化を与える謎の霊穴・「烏森(からすもり)」。その跡地に建てられた私立烏森学園の敷地を守るため、代々夜な夜な結界術を用いて妖を退治してきたのが、結界師の二大家系である「墨村(すみむら)家」と「雪村(ゆきむら)家」だ。
両家は400年にわたり正統後継者の座や手柄を巡って激しく対立してきた。墨村家の第22代正統継承者である主人公・墨村良守(すみむら よしもり)は、驚異的な結界術の才能を持ちながらも、本音では妖退治よりも「お菓子職人(パティシエ)」になりたいと願う中学生。しかし幼少期、自分を庇って傷を負ったお隣の雪村家正統継承者・雪村時音(ゆきむら ときね)を守るため、そして二度と誰も傷つけさせないために、強くなることを心に誓う。
良守と時音は、家同士のいがみ合いをよそに協力し合い、四角い空間を作り出して敵を閉じ込め滅する術「結界術」を駆使して烏森の夜を守っていく。だが、物語が進むにつれ、烏森を狙う敵は単なる野良の妖から、異能の能力者たちが組織する裏社会の巨大組織「裏会(うらかい)」や、烏森の力を奪おうと画策する謎の集団「黒芒楼(こくぼうろう)」へと広がり、戦いは苛烈さを増していく。
良守の兄・正守が率いる実行部隊「夜行」との連携や、半妖の少年・志々尾限との出会いと別れを経て、良守は自身の秘められた圧倒的な力「無想」を開花させていく。そして戦いの果てに明かされるのは、なぜ烏森にそれほど巨大な力が眠っているのかという「烏森の真の正体」と、結界師の開祖にまつわる悲しい過去だった。自らの過去や運命と向き合い、大切な人々を守るため、良守と時音は最後の戦いへと挑んでいく。
●感想
以前から気になっていた漫画『結界師』(全35巻)を最後まで読み通しました!
正直なところ、読み始めた序盤の数巻は「まあ、よくある日常系の妖退治モノかな……」という印象で、そこまで強く惹きつけられる感じではなかったんです。
ところが、物語が進んで「黒芒楼(こくぼうろう)」編あたりから一気に展開が重厚になり、裏会(うらかい)のドロドロとした暗闘や烏森の謎が深まるにつれて、どんどんページをめくる手が止まらなくなっていきました。気づいた時には完全にどっぷりハマっていました……!
後半の怒涛の伏線回収と、良守をはじめとするキャラクターたちの成長、そして綺麗にまとまったラストの余韻は本当に素晴らしく、少年サンデー屈指の名作と言われる理由がよく分かりました。
ただ、読み終えて一つだけ胸に残ったのが「主人公(良守)の母親・守美への感情」です。
彼女が凄腕の結界師であり、烏森の封印という重大な使命のために動いていた背景や、規格外のスケールを持つ人物であることは理解できるのですが……一人の親としての言動や感情には、どうしても最後までいまいち同調しきれない部分が残ってしまいました。
家庭や子供たちを置いて長く不在にしていたことや、その独特すぎる冷徹とも取れる割り切り方には、「いくら世界の命運がかかっているとはいえ、もう少し家族としての情はなかったのかな」とモヤモヤしてしまうのが本音です。
とはいえ、そういった「一筋縄ではいかない人間の複雑さや歪み」も含めて丁寧に描かれているからこそ、この作品のドラマには深みがあるのかもしれません。
最初は少し様子見のつもりで読み始めた作品でしたが、終わってみれば「読んで本当に良かった」と思える大満足の一作でした。